コンビニ行こうぜって言い出すのは、大体にしてその日の終わりを意味した。
何を買うわけでもないが、そこで一日の終わりの「日記」をつけた気分になるのだ。パックの飲み物を買って、外へ出る。そこが、その日の分かれ道だ。
甘い関係ではなくて、ただだらりと本屋と雑貨屋をめぐり、学生服姿で、学生のように町を闊歩するだけだ。最初を思い出せば、夏休み明けの試験のときに、あまりにもやる気が出ないからどこか行こうとどちらともなく言い出して、意見が一致したから飛び出したのだ。
ただそれだけ、逃避だけでもう冬を迎えてしまった。
獄寺はいつも、ファストフードでセットを食べて、その日は終わりにしてしまう。俺はセットを食べてもまだまだ足りなくて、コンビニに寄って適当にパンを見繕う。
その間に獄寺は珍しいジュースを見つけては手を出している。
悲しいルーチンワークだ。
けれども、俺は今日、ひとつ提案をした。
「獄寺、アイス食わないか?」
「アイス?」
俺が、いつものコンビニの前で立ち止まってしまうと、獄寺も少し悩んで立ち止まって、「……食べる」というと先にコンビニに入っていった。
獄寺の開けるドアから、暖かい空気と腹の空くにおいがあふれて、それに引っ張られるように俺も、中へ入った。
俺はさっさと、アイスバーをひとつ手にとって会計を済ませて、外に出た。
獄寺は少し遅めに出てきた。白い袋がその手に合って、俺は少し満足した。
あまり話題もなく、ただテストが嫌だという空気だけをわかりやすく発しながら、俺たちは並んで、決定的に方向がわかれる路地まで歩いた。
「おまえんち、行っていい?」
今言わなければいつ言うんだと、急かされるように問いかけ長く重い沈黙が終わった。けれども俺のその提案に、獄寺は乗ってくれずに、また静かな世界が訪れるのかと思った。
「勝手にしろ」
と、消え入りそうな獄寺の声を拾った。あまりに静かすぎる世界の聞かせた幻聴なのではないかとも思ったが、やはりそれは現実で、獄寺はちらりと俺の方を見ると、自分の家へと歩き出した。
アイスの袋をかさかさと鳴らしながら、その乾燥した音に、また寒さを煽られた。
寒さで、アイスは、まだ溶けない。
それからというもの、俺は新作のアイスに詳しくなった。
獄寺は、アイスを食べない。。けれども、獄寺の家に行くたびに俺がアイスを携えていくので、獄寺の家の冷蔵庫はアイスであふれていた。
もう持ってくるな、とも、食べて行けとも言わず、獄寺は冷凍庫のアイスを大事そうに貯蓄している。
こうじゃないんだよー私のイメージはー……