「すれ違う、背中合わせになる、敵対する……どれも何かしら寂しいことのように聞こえますけど、これって、相手のことを意識していないと成り立たないの、わかります?」
「なるほどね、お互いの存在を認めていないと、すれ違いはただの通過になり、背中合わせは元から存在しなくなり、敵対はただの自意識過剰になる」
「珍しく理解が早いですね」
「だって、全部経験したことだから」
「おやおやそれはそれは、悲しいですね」
「悲しい? お前が言ったんだろう、寂しいことのように、って。だから実際寂しくも悲しくもない」
「言葉の綾というやつですよ。揚げ足取りの練習ですか?」
「違うよ。ところで俺を褒めてはくれないの?」
「褒めませんよ、当たり前のことです。それより綱吉君、いつになったら僕と愛し合ってくれるんですか」
「愛し合うことなんてできないよ。俺はずっとお前と、背中を合わせて居たいんだ、寂しいからね」
「では僕が愛すことをやめるので、僕を愛してください」
「それは無理だよ」
「なぜですか? 条件に不満があるのですか?」
「お前の愛し方がわからないから、それは無理なんだ」
「そんなもの、君が中学の頃から慣れ親しんだものではないんですか」
「違うよ。俺、人の殺し方ばかり教わって、愛し方を教わらなかったんだ」
「では今から、その欠陥だらけの教育をした家庭教師に、勉強の成果を報告しに行きましょう」
「やめてよ骸、そんなことしたら、俺は先生に褒められてしまう」
「……もう君を褒めてくれる家庭教師は存在しなくなるのですよ?」
「いいや、そんなことをするなら、俺はお前を、先生に教わったとおりに殺してしまうだろう。だからやめよう?」
「ずっと背中を合わせていろと、言うんですか」
「そう、それがいい。とても健全に、安全に、万全に、自分の身を守れる。骸の味方は俺の敵で、俺の味方は骸の敵、それでいいじゃないか。そうやってお前は生きてきたじゃないか。いまさらその生き方を変えてしまうの?」
「……ええ、わかりました。でしたら僕は一方的に君を愛し続けます。ありがとう綱吉君、美しいままでいてくださいね」